地域内の発電電力を最大限に活用し主に地域内の公共施設や民間企業、家庭に電力を供給する小売電気事業を「地域新電力」といい、 そのなかで特に自治体が出資するものを「自治体新電力」といいます。
自治体新電力は、電気代を下げたり、エネルギーの地産地消を進めたりする効果がありますが、私たちはそれに留まらず、 自治体新電力が地方創生や低炭素化(CO2排出量の削減)の新たな担い手となることを目指し、それらを自治体、地元企業と協力して着実に実現していきます。
パシフィックパワーは、公共支援を60年以上にわたり行ってきた親会社のパシフィックコンサルタンツの社会的な信頼をベースに、 自治体、地元企業とパートナーシップを構築し、数多くの自治体新電力会の設立・運営に携わっています。 パシフィックパワーが参画する自治体新電力会社は以下の特徴を備えています。
※1 2020年までの電力業界の大きな動き
これまでも頻繁に電力システムに大きな変更が加えられてきましたが、2020年以降にも様々な動きが予定されています。
新電力事業の最大のリスクは制度変更にあると言っても過言ではありません。
事業継続のためには、このような事業環境の変化をいち早く把握、分析し、変化をチャンスに変えていくことが必要です。
最近では、電気料金は入札で削減できるため、小売電気事業だけでは自治体新電力の存在意義はなく、地域の発展や低炭素化、レジリエンス強化などの地域貢献事業が求められるようになってきています。
地域の維持、発展のためには、
今ある地域インフラ、サービスをうまく維持管理・運営していく『地域マネジメント事業』(守りの事業)と
新しい産業を創出する『地域振興事業』(攻めの事業)を、地域の実情やニーズに合わせて適切に実施していく必要があります。
自治体新電力会社は、官民が協力して出資し設立する会社であることから、地域の公的なサービスにおいて、民間のノウハウ・経営感覚を
活用していくことができます。
そして小売電気事業は、スタート時に大きな設備投資がなく毎年継続的に事業利益もあがることから、
それをベースとして地域の低炭素化事業や地方創生事業を展開していくことができます。
自治体電力会社は、10年、20年と長期にわたる事業実施を想定した「地域の持続的なサービス提供の担い手」になることができます。
電気の小売に留まらない、真の地方創生の担い手である地域の「エネルギー・まちづくり会社」になることができるのです。
パシフィックコンサルタンツグループは、60年以上の公共支援で培ってきた信頼、技術、ノウハウを活かし、また、
新たな技術開発、事業経営スキーム構築も進めることで、地域でのエネルギー事業、道の駅経営、観光事業、インフラ維持管理(道路、上下水道等)、
公共施設管理、パークマネジメント、空港経営などのサービス事業に取り組んでいます。
このような取り組みの中で、グループ全体で「自治体新電力会社=地域エネルギー会社、まちづくり会社」を支援サポートしていきます。
自治体新電力がシュタットベルケに?
近年、ドイツのシュタットベルケという事業体が注目されています。 シュタットベルケは、公共が出資し、電気(発電、送配電、小売)、熱供給、ガス、交通、その他市民サービスなどの 複数分野の地域サービスを提供する事業体です。シュタットベルケを英語に訳すと、City Works (まちのしごと)になります。 日本において、人口減少、少子高齢化や、国・地方自治体の財源の逼迫状況から、その解決策としてこのシュタットベルケに 期待する声が高まっていますが、ドイツの事例をそのまま日本に適用することはできないことに注意が必要です。 シュタットベルケの事業内容は、主に地域インフラ、サービスをうまく維持管理・運営していく『地域マネジメント事業』(守りの事業)に該当します。 ドイツでは、歴史的な経緯から、地域の送配電や熱供給といった市場占有度が高く利幅の大きい事業を手掛けることができており、 「収益性の比較的高い事業」と「収益性は低いが地域に必要な公益事業」を組み合わせることで、その地域に不可欠な存在となっています。 日本でも公共又は民間の事業の担い手がいて、地域にサービスが提供されてきましたが、地方においては公益事業の多くは赤字になっており、 老朽化が進むインフラ設備の維持管理さえ困難になってきています。 ドイツのシュタットベルケに学べば、民間と協同して収益性の高い公益事業を手掛けていくことが必要で、そこには新しい事業スキームが求められます。 民間のノウハウで、サービスの質を維持しつつ持続可能なものにどうやって改善していくか、日本の歴史的な経緯も踏まえつつ検討していくこと、 パシフィックコンサルタンツグループは今まさにこれに取り組んでいるところです。
自治体新電力のマイクログリッド事例『日本版シュタットベルケに向けた事業多角化の第一歩』!
2019年9月の台風15号による千葉県広域大停電の際、当社出資の自治体新電力「CHIBAむつざわエナジー」が導入・運営する
マイクログリッド(道の駅と住戸33戸への電力供給)では、周辺が全て停電する中、このエリアだけは電力供給を継続し、温浴施設を周辺住民に開放し800人以上に、シャワー、トイレ、携帯の充電を提供しました。
マクログリッドとは、複数の発電設備、蓄電設備などから、独自に敷設した配電線(自営線)を使って、需要施設へ電力を供給する分散エネルギーシステムで、
配電事業と小売電気事業、発電事業、熱供給事業からなります。
系統と1点で連系し、それ以降は自営線で電力を供給し、系統停電時にも自立的に運転を継続できますので、災害に強い電力システムと言えます。
CHIBAむつざわエナジーは、千葉県睦沢町の道の駅と町営住戸の複合開発「むつざわスマートウェルネスタウン」における電力システムにマイクログリッド設備
(コジェネ発電設備、太陽光発電設備、太陽熱設備、地中の配電設備など)を導入し、電気と熱を供給しています。
パシフィックパワーが参画している自治体新電力会社では、それぞれの経営状況や地域のニーズに合わせて、雇用創出の仕組みをつくることに取り組んでいます。
例えば、滋賀県のこなんウルトラパワーでは、事業収益を活用して公共施設の省エネルギー診断を行い、中学校の体育館の照明をLED化しました。
これにより、その設計、工事、メンテナンスなどの仕事を地元企業に生み出すことになります。
今後更に省エネや再エネ事業等を拡大し、エネルギービジネスを地域に根付かせることで、
自治体新電力だけでなく地元企業も含めた「地域の雇用創出の仕組み」を作っていきます。
地元企業は様々な経営資源をお持ちですので、その経営資源を最大限活用し、地元企業の経営の多角化を図り、その収益性と安定性を高めていくことこそが、
より多くの持続的な雇用創出につながると考えます。また、地元企業との連携事業の中で、自治体新電力会社でも雇用が生まれてくるものと考えます。
私たちは地元企業と協働で様々な事業に積極的に取り組み、地域雇用を増やす仕組みづくりをしていきたいと考えています。
そして、それぞれの地域で得られた成果を他の地域でも共有することで、雇用創出のための仕組みを水平展開していきます。